赤毛のアンの翻訳者で知られる村岡花子さん(1893-1968)のエッセイ。さすが文章の達人だけあって、面白い。
時代が古いので「これを書くと今だったらやばいんじゃないか。」と思われるページもあるからこそ、時代背景がわかってなお良い。親友の白蓮さんとの友情、ご主人を亡くされて寂しい気持ち、切々と伝わって来て感動する。でも最も心に残ったのは、5歳の一人息子を亡くした時、
「神はそのひとり子を賜わったほどに、この世を愛して下さった。」(ヨハネ3:16)
の聖書の言葉が真実性をもって迫って来たというくだり。
聖書の中には、飲み込めないことや、不思議なことがいっぱいなのです。けれども自分が最愛の子供を失った時、初めて「ひとり子を与えて惜しまない」というところのー愛ーと言うものの、いかに深いものであるかと言う事の意味が、実感として迫ってきたのは確かでした。
彼女の最後の原稿は昭和43年大阪府池田市五月丘に住む娘みどりさんの家を訪れた時を綴ったもの。(この時期伯母一家も近所に住んでいた。) 村岡花子さんは10日間楽しくお孫さん達と過ごし、東京に戻って10日目に亡くなった。この原稿の後に書かれてるみどりさんのあとがきも悲しい。