空の鳥

主に飼い猫+野鳥を撮って、紹介しています。

マリラ、いつの間にか

赤毛のアン」(松本侑子訳)を読み返す。村岡花子さんは超有名な翻訳家で、この作品の名付け親だ。でも戦争中に防空壕に逃げたりしながら書いたせいか抜けてる、あるいは省略されてる部分がある。松本侑子さんは完訳、さらに奥の深いこの作品に散りばめられた英文学の引用も解き明かしている。素晴らしい!

ところで、12歳の時初めてこの作品を読んだ時、どれほど里親のマリラが憎らしかったろう。アンに同情していた。

でも今の私はマリラと同世代。

「赤毛の里子を引き取ったマリラ」と改題しても良いぐらい、この話の主人公は、独身中年女のマリラである。

堅物のクリスチャンである彼女は、元気すぎてあちこちで失敗やらかすアンに、振り回されている。気の毒で泣きそうだ。

兄マシューは隠れて近所のおばさんリンド夫人に流行の洋服を縫わすし、世間の面目丸つぶれだ。

頭痛の持病の上眼病を患い、アンの恋人は自分の元彼の息子である。

あの時結婚してたら…と複雑だったに違いない。

でも愛を込め、立派に育て上げる。

マシューの死後、親戚の双子の孤児を育て、リンド夫人のルームメイトになり、結婚したアンに時々手紙を書く。

 

でもアンが6人の母になり、子供も大きくなった時、末の娘リラ(マリラから名前を貰った)に

「マリラおばさんはリラが小さい時に亡くなったのでリラはおばさんを良く知らない」

 

マリラが死ぬ場面は、作品の中には出てこない。

 

あれ程アンが世話になったマリラ、いつの間にか消されている。モンゴメリさん、書いてあげて欲しかった。