先日伯母が秘密を告白してくれたが、祖母も生前私に秘密を告白してくれた。
子どもたちにも誰にも言っていないと言っていた。
戦争が終わった直後、彼女は子どもたちや年老いた母と夕食をとっていた。ふと離れの縁側のガラス戸の鍵をかけ忘れた事を思い出した。ひとり立ち上がって行ってみると、そこにはゲートルを巻いた復員兵がガラス戸をあけて片足を縁側に踏み入れたところだった。
祖母は悠然と立ち向かい、すぐに出て行きなさいと命じ、怖じ気づいた復員兵が足を引っ込めるとガラス戸を閉めて鍵をかけた。
そしてこの事は子どもを怖がらせるから、決して話さなかった。９歳の私に話してくれるまでは。
私の母も伯母も７０歳を超えているが、知らなかったそうである。
祖母は子どもたちには語らずに逝ったのだ。
暑かったからか、猫たちはお椀に入れた水を飲み干してしまった。子猫は水遊びが大好き。
