一日猛吹雪。
隣の家が全焼した友人から再び電話があった。火事は日曜の午後１時に起こり、三時間燃え続け、逃げ遅れたご主人が玄関近くで帰らぬ姿となって発見された。
奥さんは助けを求めて家を飛び出したので無事だった。
彼女は事件当時家にいて、消火活動の間三時間外にずっといて燃えるのを見ていた。
その日は真冬日。雪もいっぱい積もっている。
ニュースはテレビで流れ、新聞記事にもなった。お見舞いの電話や訪問客で追われ、くたびれて早くベッドに行ったそうだ。
彼女は８０歳。子どもは遠くに住んでいる。
今まで戦争に遭ったり、ご主人や子どもを亡くすとか苦労をして生きて来た。だから、隣の火事ぐらいでめげない。
「おひな様を作る集いに今日行く事にするわ。申し込んであるんだもの、勿体ないでしょ。」
私だったらしばらくはベッドから出て来れないだろう。
人生の達人、とは彼女のような人を指すのである。
