空の鳥

主に飼い猫+野鳥を撮って、紹介しています。

プリマスへ

朝5時にうめき声で目覚める。Rさんは痛むのだ。きつい痛み止めを数時間おきに3回飲み、やっと収まった。気の毒だ。アメリカで最高の技術を誇るハーバードの病院に通っているというのに、治せないのか。彼女を見ていると痛みは患部からだけでなく、心が痛んでいるのではないか、と思う。痛い気持ちをわかって欲しい、どうしてこんなに病気なの、とか心の底から来る怒りが肉体的な原因から来る痛みに増長させているような気がしてならない。
Rさんのソーシャルワーカーは「将来の計画を立てている場合ではないです。治す薬もないし、深刻な状態なんだから、死ぬ事もあると考えないと」と言った。「私はがんなんかで死ぬなんて考えてない」と涙を溜めて怒るRさん。彼女は強い意志の持ち主だから、死ぬことはあってもガンでは死なないのかもしれない。そういう気がする。
私はクリスチャンだからイエス様のお話をしてあげたいが、「信じたら、たとえ死んでも天国に行けるんですよ」という風に話すのは今の彼女に話すのはどうだろうか。間違っている気がする。そういう事はソーシャルワーカーと同じ位残酷な行為だ。たとえ、真実でも。
お昼に痛みの取れたRさんは、ソファでうつらうつらし始めたので、マルグリットデュランの「ラマン」を再び読んだ。彼女の少女時代の回顧録だ。彼女の上の兄の話がよく出て来たが、この人は遊興のために借金を繰り返し、ついに家族や使用人のお金まで盗むようになったようだ。先月読んだ「血脈」みたいだ。サトウハチローの家族も金銭的な事で大変な目に遭った。こういう人がどこの国にでもいるのだ。まじめに働いて、コツコツ貯金している人は偉いと思う。
Rさんが目覚めた後、料理をする。終わった時点でハラと2人のミュージシャン、ギターとベースとピアノをぎゅうぎゅうに積んでプリマスへ。おしゃれなワインバーで生演奏だがまるでバークリーの練習スタジオにいるようだ。私は空腹だったので、お店の客が教えてくれたルート44沿いの「寿司ジョイ」へ。ウエイトレスは中国から来た学生だとの事。清潔で明るくよく流行っているお店だ。ドラゴンロール(エビ天巻き)は非常においしかった。多分経営者は中国人だ。誰も日本語が話せない。でも日本人になりすましている。変な感じだ。プリマスは漁港があって魚が新鮮だ。ここニューイングランドは漁場として知られ、日本から仕入れに来るそうだ。ここのお客は私と目が合ったら微笑む。ボストンではこういうことは有り得ない。
古き良きニューイングランドの人々だ。
ハラはパリにいた時、隣のアパートに住んでいた女の子と自分の友達を引き合わせたそうだ。彼らは結婚し、男の双子が生まれた。そして2人の赤ん坊の写真を送って来て「お前のせいだ」と書いてあったそうだ。「俺のせいなんだよ」と言ってゲラゲラ笑っていた。

愛人(ラマン) (河出文庫)

愛人(ラマン) (河出文庫)