パソコンの中から、懐かしい写真が出て来た。
15年ほど前、ハープを習っていたのである。
最初はレバー・ハープを「はじく」だけであったが、物足りなくなってペダル・ハープを月95ドルでレンタルして練習した。
ペダル・ハープにはピアノでいうドレミファソラシの七つのペダルがあり、普通はニュートラルの状態だが踏むとその音の弦がすべてシャープに、ペダルを反対に上げるとフラットになる仕組みで、ト長調だとファのペダルを踏んで、へ長調だとシのペダルを上に上げるのである。
臨時記号や転調のたびにロングスカートの下でバタバタ踏み換えて、ややこしい。
古典派はまだいい。バッハはどの曲も数小節小節おきに踏み換え、泣きそうだった。
オーケストラで使うのは、このタイプのハープだが、そこまで行く前に物覚えの悪い私は、ペダルで頓挫した。
ハープはピアノと違って家から運ぶ必要がある。
持ち運びが重く、はじめ楽器運送業者に80ドルで運んで貰っていた。
でも高く付くのでドリーという階段用6輪キャスターを買って自分で運んだが、車に積む時、いつも誰かが助けてくれた。
このハープのおかげでアイルランド系のセントパトリックデーのお祭り、ウエルズリー女子大のチャペル、ロンジー音楽大学の弦楽科のコンサート、感謝祭のコンサートなどで弾かせてもらった他、おこがましくも「仕事」でケンブリッジ市庁舎のパーティ、高校のパーティ、ドイツ系富裕層高齢施設のお茶会、チャペル・ウエディングでも演奏させて貰った。聴くに値しない、ひどい腕前だった。
結婚式の仕事はハープの先生が、まだ充分上手くないと言ったが、楽譜を全部初級用に書き直して、反対を押し切って仕事を受けた。
この写真を見る限り、下手な音は聴こえて来ないし、だいいち参席者も誰も聴いていない。
ハープは帰国時小さいものを買って飛行機に積んで持って来たが、腰痛で、弾くのをやめてしまった。
今は完全に家具になっている。