空の鳥

主に飼い猫+野鳥を撮って、紹介しています。

ブラザージョーのお葬式

私の行っている黒人教会のブラザージョーさんのお葬式へ。アメリカへ来てお葬式にくるのは初めてだ。
ピアノを弾いてくれと言われ、黒い服を着て教会へ。夕べまた雪がつもり、あちこちにまだ雪にすっぽり埋まってる車を見かける。
バプテスト教会に着くと駐車場係から「埋葬には行きますか?」といきなり聞かれる。「いいえ、多分行かないと思います」と答える。今日はまだ暖かいとはいえマイナス6度だ。寒いに違いないし多分墓地にはピアノはないだろうから私が行っても仕方がないし。すると、「じゃ、こちらに駐車してください」と言う。なんでも墓地までの葬列におびただしい車が参加するようだ。
チャペルにはりっぱなカントリーブルー棺桶が置かれ、扉が半分開いてブラザージョーが横たわっているのが見えた。メアリが棺桶の横にやってきて「今日の支払いは遺族からよ。いくらでいいの?」と聞く。故人に聞こえるではないか。
ブラザー・ジョー・ウイリアムソンは享年83歳。ウエストバージニアに6人兄弟の一人として生まれ第2次大戦ではヨーロッパで戦い、帰還後はボストンに引っ越し結婚し、49年妻と暮らし、ポラロイド社の警備員として働き、甥や姪の子守りをして教会でも忠実な信徒だった。スピーチでは姪が「私の母が産気づいたとき、アンクルジョーが病院に運んでくれたんです。彼は私の子供が14年前に生まれた時ベビーシッターをしてくれました」と涙ぐみ、その子供もスピーチで「おじさんは小遣いをくれたり映画を見に連れてってくれたりした。寂しくなるよ」と言った。
お葬式は日本と全然違い、最初の1時間は静かなBGMの中、半分開いた棺桶に横たわる遺体を前に親族と談笑。時々、新しく来た弔問客が遺体を見に行く。次の1時間はセレモニーで、聖歌隊がゴスペルを歌ったり、弔辞を述べたい人が述べたりする。ケリー牧師は故人が起きるのではないかと思うほど大きい声で説教した。会衆は葬儀社の人をのぞいて一人残らず黒人だったが、だれも野次を飛ばしたり手拍子や足踏みをしたりしなかった。
参列者の服装は黒か白だった。その辺りは日本と同じか。でも、告別式のプログラムには「召天祝福式」と記され、「私は自由です」という詩が朗読された。お葬式の締めは「聖者が街にやってくる」だ。これは出棺の時に聖歌隊によってにぎやかに歌われた。そしてやはり黒人のお葬式は奴隷時代の伝統が残っているのだ。厳粛で心のこもった良いお葬式だった。彼には子供が出来なかったようだが、姪や甥の面倒をよく見たので感謝されてるようだ。平日なのに教会の人はほぼ全員参加していた。黒人の人々同志のつながりはとても強いのだ。
彼の棺桶は星条旗で最後に包まれた。彼は兵士だったからだ。大戦のヨーロッパから無事に帰れて天寿を全うし、ラッキーだったと思う。彼の戦友は多くが死んで帰られなかったことだろう。
ピアノの伴奏は人々から「グッドジョブ」と言われた。でも神経をすり減らす。うちの聖歌隊は直前まで曲を決めないのだ。式の真っ最中に彼らをみるとクチパクで曲名を私に言うのだ。2時間半も弾き続けてどっと疲れる。