空の鳥

主に飼い猫+野鳥を撮って、紹介しています。

「わが母の記」井上靖著 映画(2011)

実話に基づいた、家族愛と壮絶な認知症介護の物語。主人公は役所広司認知症の母は樹木希林が演じている。作家として有名な主人公、ある日父が亡くなる。そして未亡人になった母が同じことを何度も壊れたレコードのように尋ねることに気づく。それから彼女が亡くなるまでの約10年間、兄妹がおばあちゃんのお世話をする。おばあちゃんの認知は進み、徘徊で困らせる。最後は静かに息をひきとる。樹木希林は白木の棺に横たわり、鼻に綿まで詰めていた。この映画で井上靖の自伝的小説「しろばんば」のおぬいばあちゃんの50回忌が出てくるが、ご本人の遺影が使われている。元芸者だっただけあってきれいなおばあさんだった。実際の井上靖の家や別荘で撮影された。大型客船を見送る応援団シーンは小津安二郎「東京暮色」ラストシーンの影響受けてるのかな。大型客船に乗ってどこに行くんだったんだろう。それと浜辺で迷子になったおばあちゃんにばったり会うシーンは唐突でわざと感動させていて、余計だ。


それでも面白い映画だったので、kindleにダウンロードして書籍も読んだ。映画はかなり現実に近いエピソードを表現していたが、やはり文豪井上靖の話は、断然ぐっと面白かった。昭和40年代頃の、しかも女中や運転手もいる豊かな家ですら、認知症の介護は大変だったようだ。おばあちゃんは消しゴムで最近の記憶から遡って消して行って幼女のようになった。亡き夫は真っ先に記憶から消され、4人の子供も隣にアメリカから帰国してきた弟すら、弟だとわからない。
いくら子供や孫が米寿のパーティをしてくれても、ひとり楽しそうでなかった。孤独なのである。わが母の記 [DVD]

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わが母の記 (講談社文庫)

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