空の鳥

主に飼い猫+野鳥を撮って、紹介しています。

波多野勤子の往復書簡集『少年期』

数日前映画「少年期」を観たところだったので、原作を取り寄せて読む。
めちゃくちゃ面白かった。
戦争中中学生だった、一郎こと後の法学者波多野里望とお母さんで心理学者の波多野勤子との交換レターである。この本はベストセラーになり映画化された。
開成中学(本の中では東京で一二の学校とだけある)1年の息子は、長野県に疎開する家族と別れ東京に1人残る。他人との暮らしでのつらい思いを母に書き送る。英語は村岡花子に習いに行っていた。空襲警報のたびに汽車に乗って家族のもとに来るため、成績も下がってくる。ついに長野県の家族の近所に転校。でも近所の田舎の付き合いは大変で、疎開者を差別。母親は毎日買い出しや配給に出かけるが、学者の父は本ばかり読んでいる。息子はそれが不満でその気持ちも手紙にぶつける。自由主義者憲兵に狙われ大学の学長をしていたような父は、外をうろついたり人に頭を下げたりなどできないからだ。初めはラブレターのようで、母を崇拝していた息子だったが次第に成長して時には母にも反抗的になっていく様子がよくわかる。
最後は一高に合格してメデタシとなる。
お母さんの返答が素晴らしい。さすがだ。アナライズもしている。息子は4人とも東大に入ったそうだから、スゴい母だ。
再版はされていなくて古本でないと読めないが、あれだけ自由に諏訪での疎開先の苦労を書いていたら、再販出来ないのも無理はないと思う。
でも息子は小学校の時川端康成の模範綴方全集に選ばれているので、子供ながら文章がうまい。そして何より戦争の大変さがよくわかる。

少年期―母と子の4年間にわたる手紙 (女性文庫)